歯科治療では、歯の一部分を修復したり、失ってしまった箇所の歯を作ったりする際に、口の中を忠実に再現するために型取りの材料を使って口の中の模型を取らなければいけません。これを印象採得(いんしょうさいとく)と呼びます。この印象採得では、ある一定時間、印象材を口の中に入れるため患者様によっては、苦しい思いや嘔吐反射をしてしまうことがあります。皆さんの中にもそういった経験がある方が多いのではないでしょうか。
口腔内スキャナーとは?
口腔内スキャナーは、お口の中の状態を小型カメラで撮影し、そのデータを立体的な画像(3D)で見ることができる医療機器です。
一人ひとり違うお口の状態を小型カメラで撮影(スキャン)し、そのデータを3Dの画像で見ることができます。
360度あらゆる角度から見ることができる3Dの画像にすることで、肉眼では見えにくい部分もはっきりと確認することができます。
従来の印象採得
従来の印象採得では、患者様に長時間お口の中に異物を入れたまま我慢して頂かないといけため、どうしても体力的・精神的負担が伴います。
素材の性質上、材料が空気中や水中に触れてしまうことで形が変わってしまったり、材料を固める際の温度に反応して形が変形したりと作業工程ごとに本来の形とのズレが生じることが多々あります。
つまり、従来の印象では歯の形としての正しい情報が得られにくいということです。
患者様によっては、詰め物や被せ物を入れても噛み合わせに違和感があったり、形が合わずに痛みを感じたりすることがあります。
次世代の印象採得
従来の印象採得の悩みを解決してくれるのが口腔内スキャナーと呼ばれるデジタル機器の導入による印象採得です。
当院では、Primescan(プライムスキャン)と呼ばれる口腔内スキャナーを取り入れた診療を行っています。
※保険診療の対象外ですので、全額自己負担となります。
この口腔内スキャナーは患者様のお口の中を小型カメラにより、歯列をなぞるだけで撮影することができるため、今までの印象採得のような不快な思いをすることありません。
型取りの時以外でも、印象材を使った模型では、印象材が固まる時に形が変わってしまうことで詰め物や被せ物が入らないこともありますが、Primescan(プライムスキャン)を使えば、高解像度のデータを読み取れることができるため詰め物や被せ物を正確に作ることができます。
読み取ったデータをもとに立体画像として再現することが可能となり、普段見ることができないご自身のお口の状態について正確な情報を知ることが、治療に対する安心感に繋がります。
口腔内スキャナーを使うメリット
印象材による歯型作成が不要なため患者様の負担軽減になる
型取りを行う際に、口腔内スキャナーを使えば、吐き気や不快感など患者様が感じる負担を減らすことができます。それに加え、口腔内スキャナーを活用すれば、精密で歪みの少なく、速やかな治療計画を立てられるため、早期の治療をはじめることができます。
また、精密かつ正確な型取りが治療術後の違和感や不快感も軽減できます。
小型カメラをお口の中に入れて短時間でデータを取れるため、嘔吐反射を防ぐことが出来る
これまでの歯型取りでは、印象材をお口の中に入れてから一定時間待つ必要がありましたが、口腔内スキャナーを使うことによって短時間で口腔内状況を把握することができます。
特に、口腔内スキャナーにより、嘔吐反射を防ぐことができるのは大きなメリットです。
高解像度センサーにより詳細なデータを取れるため、詰め物や被せ物の完成度が高くなることで、よりよい歯科治療の提供に繋がる
口腔内スキャナーの使用は、治療の精度向上にもつながります。口腔内スキャナーで取り込んだ画像を使えばさまざまな角度から口腔内を検証できるため、見逃しがちな虫歯や歯石もしっかり治療できるようになります。
また、より精密なマウスピースや詰め物・被せ物の作成により、被せ物が取れる、高さや噛み合わせが合わないことなどを防げます。
口腔内スキャナーの導入によって、高精度かつスピーディーな型取りが可能となり、患者様の負担を軽減させることが出来ます。
口腔内スキャナーの活用例
口腔内スキャナーを使ったインプラント治療
口腔内スキャナーで取得した画像データはさまざまな角度から口腔内の検証を行うことができ、インプラント治療の術前診断にも大きな力を発揮します。
さらに、口腔内スキャナーとCTとを併用し、デジタルによるシミュレーションを行うことで、より安全で迅速なインプラント治療が実現できます。
例えば、口腔内スキャナーで撮った口腔内とCTを一体化させて口の中全体を見える化します。そこにバーチャルの歯をおいてインプラントの大きさや埋入方向を診断していきます。そうすることによって骨の有るところ、神経の無いところにインプラントをより確実に埋入することが可能になります。
口腔内スキャナーを使った矯正治療
歯列矯正には「歯の型取り」が欠かせません。歯型を取るには印象材と呼ばれる粘土のような材質を口のなかに入れる必要があり、患者様によっては不快感を覚えたり、嘔吐反射が起きてしまったりと苦痛を伴う場合があります。
しかし、口腔内スキャナーを使用するとそうした印象材が不要になり、短時間で歯の型取りが終了します。口腔内スキャナーは立体的にお口の中を画面に映し出すことができ、歯並びはもちろん、360度の方向から歯の状態を見ることができます。
特に、マウスピース矯正は歯列矯正が完了するまで何度も歯の型取りをする必要があるため、口腔内スキャナーを導入することで患者様の負担を軽くできるうえ、より精度の高い歯並びや噛み合わせのデータを得ることが可能になります。
さらに、口腔内スキャナーによって得たデータをもとにより精密な治療計画を立てることができ、矯正治療後のシミュレーションも簡単にできるようになります。